ホラー映画『残穢』 / ホラー映画レビュー
■邦画ホラーを映画館で
どうも最東です。
ホラー映画といえばもっぱら洋画ばかり観ている私ですが、珍しく今回は邦画ホラーの最新作『残穢』を観てきました。
今回は、とあるホラー作家の方と(というよりも前回の『グリーンインフェルノ』も)観てきたのですが、露骨に評価が別れたのが印象的で色んな意味で忘れられない作品となりそうです。
■あらすじ
残穢の物語は次の通りです。
ホラー小説家の『私』は読者の『久保さん』から自宅マンションから妙な物音がして気味が悪いという便りをもらった。
久保さんが調べたところによると、その部屋はいわゆる『事故物件』などではないという。
その便りを頼りに調べてゆくと、どうやら久保さんの住むマンションの一室だけでなく他の部屋にも奇妙な現象が起こっているというのだ。
ホラー小説家である私は、マンション自体にではなくその土地に忌まわしいなにかがあるのではと、ミステリー研究会でもある久保さんと調査をしてゆく。
その中で次々と明らかになってゆく、その土地にまつわる数々の忌まわしい事故や事件が明るみになり、この土地にはずっと以前から呪いともいえる因縁が根付いていたのだ。
やがて明らかになってゆく真実の中で、私を始めとした各人に奇妙な現象が起こり始める……というものです。
■映画の作り
結論からいうと、私個人としてはこの映画の評価は高いです。
ひとつ大きな理由として、『映画』と『ドキュメンタリー』の中間をいくような手法で撮影されていること。
これにより、テレビスペシャルなどで怪異を追うドキュメンタリーを映画で見ているような錯覚に陥るのです。
それは同時に、『本で読む怪談』を【映像】で見るように工夫されていて、懐かしいのに新しい撮影法だと思いました。
ただし、裏を返せばそれだけ陳腐な印象を受けかねない危ういバランスだと感じました。
映画の中で三人称と一人称が切り替わるのは面白く、知っている役者であってもまるで一般人が質問に答えているようで、このあたりも劇中のリアリティを増す助けになっています。
しかし、相応のボリュームをまとめようとしたからなのか、ところどころで説明臭くなっていたり、因縁を追うカットの切り替わりが終盤にかけて気を散らされる演出にもなっていました。
また強烈な事件や不幸が起こるわけではなく、あくまで【登場人物に起こったことを想像させる】手法を強く取り入れているために、わかりやすい恐怖は薄かったようにも思います。
『リング』『呪怨』以前のJホラーに代表される【居心地の悪さ】を感じさせる……例えるのならば【不安系ホラー】という恐怖が好みである方にはお勧めします。
■恐怖について
ホラー映画で在る以上、決して無視できない要素が『恐怖』。
昨今では『感動系ホラー』や『理不尽系ホラー』など、さまざまなカテゴライズがされていますが、その中でこの作品を例えるのならば『不安系ホラー』でしょうか。
『お持ち帰りホラー』というキャッチコピーがついていた本作ですが、その辺は微妙な感じはしました。
なにしろ『物音』が重要なキーになるのですが、あくまでそれはキッカケに過ぎずその後続々と明らかになる過去の出来事に、終盤にはすっかりそれが薄味になってしまっているからです。
持ち帰り……という意味では、そこまで物音に敏感になるかといえば疑問ですね。
ちなみに私が思うこの作品の『恐怖』のポイントは、『観た自分にもなにかが起こるかもしれない』ではなく、『土地を呪うほどの業』という点。
つまりは、『人間の恐ろしさ』なのです。
幽霊というよりも、過去に人間がその土地に起こしてきた『愚行』がさらなる『愚行』を産み、悲劇を重ねてゆく。
そしてつもりに積もった悪意や憎悪がそこに住む住人にも伝染してゆくのです。
この作品、『心霊もの』に見えて実は『人災もの』と言い換えていいのではないでしょうか。
■ストーリーについて
ホラー小説家である『私』を中心に展開してゆくのですが、終盤までちゃんと一人称を守っているのに、最後の見せどころでは唐突に三人称になったりと『恐怖の押し付け』を激しく感じました。
折角ここまではじんわりと気味の悪い展開を続けていたのに、あの土壇場で興ざめする人も多数いるのではないかと思います。
新鮮な作りをしているのに、全てが台無しになりかねない危ないシーンでした。
他にもミステリー研究会や、怪談マニア、ホラー小説家などその道のプロフェッショナルが集い過ぎていてなんだか現実感に乏しいとも感じました。
胡散臭い霊能者がいないだけマシですが、それでもこういったホラーマニアが集まって心霊スポット的な場所に押しかけるのは(しかも夜に)おかしく、お約束というかご都合的な側面が見え隠れしています。
また物語としての矛盾点も多く、もしかして繰り返し見ることで分かることもあるのかもしれませんが、謎を解明する系のホラーで露骨に残す謎はただ後味が悪くなるだけなので印象が悪かったです。
■総評
さていいところも悪いところも書きましたが、全体的に好みの作品ではありました。
それだけに『惜しい』と感じる場面の多さに残念な気持ちもあります。
同席した作家の方は私とは逆にこの映画については酷評で、こんなにも自分との評価が別れることがないのである意味でそれも新鮮な思いでした。(笑
しかし、感想が別れるのも映画や創作の面白味でもあります。それは是非貴方の目で判断ください。
評価 ★★★★☆
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